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【超短編】ただいま、おかえり

「ただいま」
『おかえり』
重い鉄のトビラに鍵を差し込んでカチャリ。
重いハズのトビラは風に押されて勢いよく開く。
そのせいで少し身体がもっていかれそうになったけど、キミの前なので気付かれない様に、慌ててないフリをした。
『おなか空いたよぅ。』
甘えた様に、おなかをさすりながら話すキミは、僕よりずっと小さいせいでいつも上目使いだ。
「わかった。すぐ着替えて作るから待ってて。」
食事を作るのは僕の役目。
例え朝が早くても、昼の分もあわせて作る。
例え帰りが遅くなってしまっても、キミはずっと待っている。
二人で一緒に、暖かい食事をする事は僕らにとって、とても重要だから。

家着に着替えて、すぐ台所に立つ。
手際良く、とは行かないけど、ベーコンを切ってフライパンへ。
その間にパスタを茹でながら、ベーコンから油が滲みだしたフライパンに刻んだタマネギを入れて炒める。
タマネギに火が通ったら小麦粉を入れて、牛乳を少しずついれて溶かす。
茹であがったパスタを、フライパンに入れて、最後にチーズを入れれば、クリームパスタの完成。
それをお皿に取り分けてキミが待ち構えてるテーブルへ。
キミは大きなしぐさで、ゆっくりと匂いをかいで、満足げな顔を浮かべる。
『「いただきますっ。』」
フォークにくるくるとパスタを巻き付けて口の中へ。うん、悪くない。
しばらくするとキミの顔が不満げに。
『タマネギは歯ごたえが無いくらいに炒めてって言ったでしょ?』
「あ、ゴメンね。今後は気を付けるよ。」
そう言えば、キミはタマネギのシャリって感触が嫌いだったね。
だったら自分で作れば良いのに、なんて事は口が裂けても言わない。

『「ごちそうさまでした。』」
食べ終われば二人で後片付け。
とは言っても、フライパンや鍋はすでに料理をしながら洗ってるので、後はお皿とフォークとか位だ。
せまいシンクに並んで洗う。これも恒例行事。
その後は、二人で本を読んで、眠るまでの時間を過ごす。
読み終われば、その本について話す。
基本的に、先ずキミが先に読んで、その後に僕が読む。
なので、キミが気に入らなかった本を、僕は読む事が無い。
もう僕はキミの思い通りになってるのかも知れないね。

お風呂からあがったら、もう眠る準備をしなくちゃ。
腰まで届きそうな長い髪のキミは、ドライヤーと悪戦苦闘してる。
それを横目でみながら、眠る前のタバコを僕は吸う。
それから二人でベッドに向かう。

僕はキミを抱く。
キスをする。長い髪ごと頭をなでる。服の上から身体をなぞる。
肌に触れる。キミの呼吸が少しずつ乱れていく。僕は布団にもぐりこむ。
高まるキミを何度も見ながら、僕はキミの中に入る。
ゆっくりと、ゆっくり、近づいてくる。
やがて果てる。夢が終わる。

そして、僕はまた気付く。
目の前のデスクトップには、開いたフォルダと数個の圧縮ファイルが写っている。
その全てに、キミの動画や、画像や、言葉や、文字が入っている。
それを見て、今日も僕は果てる。
そして、僕はまた気付く。
もうキミはココには居ないのだと。
思い出は僕の頭と、目の前の電子ファイルだけになっている。
更新はされる事は無い。二度と。

それでも、僕はココを抜け出せないでいる。抜け出さないでいる。
それは愛では無い、と言わば言え。かまうもんか。
僕が忘れたら、一体誰がキミを想うんだ?
僕が想う限り、キミは未だココに居て、僕との日々を過ごすんだから。

明日も、明後日も、きっと僕は繰り返すだろう。
僕の「ただいま」の声に、キミは『おかえり』と返してくれるよね。
そして、同じ夢を始めよう。
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こーじ

Author:こーじ
愛知県に住んでいる
ギター&ボーカルな人です。

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