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もりのくま第6話(最終話)

それから毎日、いままでと同じ様に、もしかすると今までよりも力強く、ロロは日に何度が吠えた。
いなくなっていた鳥たちは、チルやミルが説得した様で、次第に湖のほとりに戻ってきだした。
戻ってきた鳥たちは、やはりチルがロロに紹介し、ロロはその一人一人に「僕はロロ。よろしくね。」と挨拶を交わした。
ロロが吠えると、今でも鳥たちは一斉に飛び出したが、その様子はとても楽しそうなものに変わっていった。
その様子を見る事も、ロロの楽しみの1つだった。
そして、吠えない間、ロロはチルやミル、その仲間たちとおしゃべりをして過ごしていた。
いつの間にか、そこにはリスも加わっていた。
そして、秋も深まった頃には、その様子を羨ましそうな顔で見ていたキツネも、ロロが声を掛けて、そのおしゃべりの仲間に入っていた。
鳥たちは最初とても嫌がったが、話してみるとキツネはとても話が上手だった。
それでも、日に何度か吠える事は、すでにイベントの様になっていたが、ロロは毎日続けていた。
そうやって、日々は流れ、やがて白い雪がつもりだすと、鳥たちは、また春には戻ってくるから、とロロに別れを告げ、山の向こうへと去っていった。
ロロはたくさんの木の実や果物を集め、銀杏の木の下の穴で眠り、ゆっくりと春を待った。


そんな季節を何回か繰り返した、何度目かの春の始まりが来た日だった。
ロロは毎年の事ながら、長い冬眠から目覚めた。
穴からのっそりと抜け出し、長いあくびと共に、大きく伸びをした。
もうチルやミルたちは戻っているだろうか?とぼんやりした頭で考えながら、顔を洗いに湖に向かった。
森には数日前に冬を惜しむ様に降った雪が残り、湖はところどころ薄氷を張って、とても冷たそうだった。
それでも、森の木たちは新たな芽を出し、とてもきれいでハリのある葉を空に向け、春の訪れを声高らかに祝っている様だった。
けれど、そんな様子は、いくらロロが冬眠明けで頭がぼんやりだった事を差し引いても、まったくロロの目には映らなかった。
ロロはそこにある、いつもと違った景色、いつもの春と違った景色に目を奪われていた。

そこには一人のにんげんが湖に向かい立っていた。

そのにんげんは、ロロの肩より少し小さいくらいの背丈で、長くのばしたサラサラの茶色い髪はまっすぐに腰の辺りまであって、ひざより少し先に届くくらいの赤いワンピースみたいな服を着ていた。
肌もとても真白で、まるで冬の国から来たみたいだった。

「エリ…」
ロロはすぐにそれがエリだと気がついた。もう少女と言うには大きくなったエリを見て、ロロは思わずその名前を口にしていた。
そしてゆっくりと、とても、とてもゆっくりとエリに近づいていった。
ロロが踏むその落ち葉のカサリと言う音に気付いて、エリが振り向いた。
その大きな黒い目に、ロロはそれがエリだと確信をした。が、その目に見つめられた時、ロロは立ち止まった。
そして、すっかり忘れかけていた、いや実際には、忘れた事などなかったが、薄れつつはあった、あの胸の空腹感をハッキリと思い出していた。
ロロは悲しいような、苦しいような、困ったような顔になっていた。

「ゴメンなさいっ!」
エリは元気よくそう言い、腰を曲げて頭を深々と下げた。
「あの時、私、どうしていいのか分からなくて…。ずっと謝りたかったの。」
頭を上げたエリは、ロロを見つめて、とても悲しい顔でそう言った。
「ずっと謝りに来たかったのだけれど、あれからママがすごくうるさくなって…。やっと一人で出歩ける様になったから…「エリ…。」
話し始めたエリの声をさえぎって、ロロはとても弱弱しく、聞えるか聞えないか位の声でそう言った。
エリは幼さの残るその顔で、あの時と同じ様に少しだけキョトンとしたが、スッと優しい顔になり、ロロの言葉が続くのを待った。
それからどれくらいだろうか。数秒、数分、もしかしたら10分近くそうしていたのかも知れない。
ぼんやりとエリを見つめてたロロを、エリはじっと待った。
風がふいて、森をカサカサと鳴らす音がかすかに聞えた。
その音にまぎれる様に、森に戻ってきたチルやミルや仲間たちも、かつてロロが傷つけた木、いまではその傷も何処にあったのか分からなくなっていたが、に止まり、二人の様子を静かに見守っていた。
そして、やはり弱弱しく、それでも何かを決意した様に、ロロは下を向いて、こう言った。

「…もう一度…もう一度だけ、僕の名前を…呼んでくれないか…。」

その声は、まるで何かに許しを乞う様に、まるで何かに祈る様に響いた。
エリは少し驚いた顔をしたかと思うと、ニッコリ笑ってから、強く優しく、
「イヤよっ!!」
と言った。
その声にロロは顔をあげてエリを見た。ロロはまるで何を言われたかのか分からない様な顔をしていた。
そんなロロの顔を見て、エリはクスッと笑ったかと思うと、
「一度なんてイヤよ。これから何度だって呼ぶんだから!」
と言って、わざとふざけて怒ったような顔をしてロロを見た。
ロロはしばらく立ちすくんでいたが、その大きな身体をひざから崩れ落ちるようにしてうずくまった。
そして泣いた。
涙をぬぐうために、毛むくじゃらの腕を目に何度もこすりつけたが、涙はぬぐい切れなかった。
ロロは、その時、やっと胸の空腹感が何なのか分かった。
そして、それが埋まっていく様な感じがしていた。それでも、だからそこ、涙はまったく止まらなかった。
そんな泣きじゃくるロロに、エリはそっと近づき、その、やはり毛むくじゃらの頭を、とても細い、雪のように白い腕で優しく抱き、ゆっくりと撫でていた。
ロロが泣き終わるまで、何度も、何度も、ゆっくりと、ゆっくりと撫でていた。

その周りを、まるで二人を祝うかの様に、チルやミルやその仲間たちがチチチッと鳴きながらクルクルと飛びまわっていた。
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こーじ

Author:こーじ
愛知県に住んでいる
ギター&ボーカルな人です。

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