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2012年1月のライヴ

2012年1月8日(日)
『俺のクラッチ、君のグレッチ vol.2』
@池下GURU×GURU

大栗ブラウン
中野こーじ

オープン19:00 スタート20:00
ライブチャージ 1500円
別途、入場時1ドリンクオーダー必要
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もりのくま第6話(最終話)

それから毎日、いままでと同じ様に、もしかすると今までよりも力強く、ロロは日に何度が吠えた。
いなくなっていた鳥たちは、チルやミルが説得した様で、次第に湖のほとりに戻ってきだした。
戻ってきた鳥たちは、やはりチルがロロに紹介し、ロロはその一人一人に「僕はロロ。よろしくね。」と挨拶を交わした。
ロロが吠えると、今でも鳥たちは一斉に飛び出したが、その様子はとても楽しそうなものに変わっていった。
その様子を見る事も、ロロの楽しみの1つだった。
そして、吠えない間、ロロはチルやミル、その仲間たちとおしゃべりをして過ごしていた。
いつの間にか、そこにはリスも加わっていた。
そして、秋も深まった頃には、その様子を羨ましそうな顔で見ていたキツネも、ロロが声を掛けて、そのおしゃべりの仲間に入っていた。
鳥たちは最初とても嫌がったが、話してみるとキツネはとても話が上手だった。
それでも、日に何度か吠える事は、すでにイベントの様になっていたが、ロロは毎日続けていた。
そうやって、日々は流れ、やがて白い雪がつもりだすと、鳥たちは、また春には戻ってくるから、とロロに別れを告げ、山の向こうへと去っていった。
ロロはたくさんの木の実や果物を集め、銀杏の木の下の穴で眠り、ゆっくりと春を待った。


そんな季節を何回か繰り返した、何度目かの春の始まりが来た日だった。
ロロは毎年の事ながら、長い冬眠から目覚めた。
穴からのっそりと抜け出し、長いあくびと共に、大きく伸びをした。
もうチルやミルたちは戻っているだろうか?とぼんやりした頭で考えながら、顔を洗いに湖に向かった。
森には数日前に冬を惜しむ様に降った雪が残り、湖はところどころ薄氷を張って、とても冷たそうだった。
それでも、森の木たちは新たな芽を出し、とてもきれいでハリのある葉を空に向け、春の訪れを声高らかに祝っている様だった。
けれど、そんな様子は、いくらロロが冬眠明けで頭がぼんやりだった事を差し引いても、まったくロロの目には映らなかった。
ロロはそこにある、いつもと違った景色、いつもの春と違った景色に目を奪われていた。

そこには一人のにんげんが湖に向かい立っていた。

そのにんげんは、ロロの肩より少し小さいくらいの背丈で、長くのばしたサラサラの茶色い髪はまっすぐに腰の辺りまであって、ひざより少し先に届くくらいの赤いワンピースみたいな服を着ていた。
肌もとても真白で、まるで冬の国から来たみたいだった。

「エリ…」
ロロはすぐにそれがエリだと気がついた。もう少女と言うには大きくなったエリを見て、ロロは思わずその名前を口にしていた。
そしてゆっくりと、とても、とてもゆっくりとエリに近づいていった。
ロロが踏むその落ち葉のカサリと言う音に気付いて、エリが振り向いた。
その大きな黒い目に、ロロはそれがエリだと確信をした。が、その目に見つめられた時、ロロは立ち止まった。
そして、すっかり忘れかけていた、いや実際には、忘れた事などなかったが、薄れつつはあった、あの胸の空腹感をハッキリと思い出していた。
ロロは悲しいような、苦しいような、困ったような顔になっていた。

「ゴメンなさいっ!」
エリは元気よくそう言い、腰を曲げて頭を深々と下げた。
「あの時、私、どうしていいのか分からなくて…。ずっと謝りたかったの。」
頭を上げたエリは、ロロを見つめて、とても悲しい顔でそう言った。
「ずっと謝りに来たかったのだけれど、あれからママがすごくうるさくなって…。やっと一人で出歩ける様になったから…「エリ…。」
話し始めたエリの声をさえぎって、ロロはとても弱弱しく、聞えるか聞えないか位の声でそう言った。
エリは幼さの残るその顔で、あの時と同じ様に少しだけキョトンとしたが、スッと優しい顔になり、ロロの言葉が続くのを待った。
それからどれくらいだろうか。数秒、数分、もしかしたら10分近くそうしていたのかも知れない。
ぼんやりとエリを見つめてたロロを、エリはじっと待った。
風がふいて、森をカサカサと鳴らす音がかすかに聞えた。
その音にまぎれる様に、森に戻ってきたチルやミルや仲間たちも、かつてロロが傷つけた木、いまではその傷も何処にあったのか分からなくなっていたが、に止まり、二人の様子を静かに見守っていた。
そして、やはり弱弱しく、それでも何かを決意した様に、ロロは下を向いて、こう言った。

「…もう一度…もう一度だけ、僕の名前を…呼んでくれないか…。」

その声は、まるで何かに許しを乞う様に、まるで何かに祈る様に響いた。
エリは少し驚いた顔をしたかと思うと、ニッコリ笑ってから、強く優しく、
「イヤよっ!!」
と言った。
その声にロロは顔をあげてエリを見た。ロロはまるで何を言われたかのか分からない様な顔をしていた。
そんなロロの顔を見て、エリはクスッと笑ったかと思うと、
「一度なんてイヤよ。これから何度だって呼ぶんだから!」
と言って、わざとふざけて怒ったような顔をしてロロを見た。
ロロはしばらく立ちすくんでいたが、その大きな身体をひざから崩れ落ちるようにしてうずくまった。
そして泣いた。
涙をぬぐうために、毛むくじゃらの腕を目に何度もこすりつけたが、涙はぬぐい切れなかった。
ロロは、その時、やっと胸の空腹感が何なのか分かった。
そして、それが埋まっていく様な感じがしていた。それでも、だからそこ、涙はまったく止まらなかった。
そんな泣きじゃくるロロに、エリはそっと近づき、その、やはり毛むくじゃらの頭を、とても細い、雪のように白い腕で優しく抱き、ゆっくりと撫でていた。
ロロが泣き終わるまで、何度も、何度も、ゆっくりと、ゆっくりと撫でていた。

その周りを、まるで二人を祝うかの様に、チルやミルやその仲間たちがチチチッと鳴きながらクルクルと飛びまわっていた。

もりのくま第5話

ロロは湖のほとりに居た。
大きな体をすっかり小さく丸めて、ふるえる様に泣いていた。
もう泣き声も、叫び声も出てはいなかった。
胸のあたりに感じる空腹感は、さっきよりずっと大きく、ハッキリと感じられる様になっていた。
どれだけ泣いても、その空腹感は埋まる事は無かった。
一度、湖のほとりにたどり着く直前、いつも鳥たちがお喋りしている大きな木、その時も鳥たちはお喋りしていたのだけれど、それに向かって、思いっきり、勢いよく爪を立てた。
木は大きく揺れて、鳥たちが一斉に飛び上がったが、幹がえぐられた不快な音が、鳥たちの羽ばたきの音を消してしまっていた。
それでも、空腹感は埋まらなかったし、より深く空腹になった気さえした。

気がつけば、日が暮れていた。それすらロロは気がつかなかった。
そして、月が湖にその姿を映した頃、ロロはゆっくりと立ち上がり、とぼとぼと銀杏の木の下の穴の中に入っていった。
それから数日間、湖のほとりにロロの姿を見る事は無かったし、鳥たちが一斉に飛び上がる様な声も聞こえる事は無かった。

ロロは穴から湖のほとりまで歩き出ていた。
少し頬がこけていたけど、それに気付くものは誰も居なかった。
そもそも、ロロの顔はハッキリと見つめられた事など無かった。エリ以外には。
湖に入り、水面に映る自分の顔を見てロロは「ヒドイ顔だな…。前からヒドかったけど。」と思いながら、水をすくい、顔を洗った。
秋が近づいた湖の水は少し冷たかったけれど、その冷たさが自分を清めてくれる気がした。
ロロはいつもの朝なら、もう少し湖の深い所にはいり、闇雲にバシャバシャと水面を叩いて魚を捕っていたが、そんな気分にはなれず、湖から出ると、木の実を集める事にした。
集めている時に、大きな木の幹が深く傷ついているのを見た。
最初それが何か分からなかった。けれど、その傷は自分が付けたものだと思い出した時に、また少し悲しくなって、傷から目をそむけた。
いくつか木の実を集めて、ほとりに座り込んだロロは「こんな時でもお腹は空くんだな。」と思いながら、どんぐりや銀杏をちびちびと食べた。以前よりはぜんぜん美味しくなかった。
食べ始めて、しばらくした時、ロロは「何か変だな?」と思った。
何か、がまったくピンと来ず、またちびちびを食べだしたが、固い銀杏を勢いよく噛み砕いた時にハッと気付いた。

鳥のおしゃべりが聞こえないのだった。
いつもならうるさいくらいに勝手気ままにおしゃべりしている赤や青の羽根の鳥たちの声はまったく聞えなかった。
「どうしたのかな?」とロロは少しだけ思ったが、今はまだ大声で吠えて、鳥たちを飛び立たす気にはなれなかったし、しばらくなれそうに無かったので、そんなには気にしなかった。
しかし、ロロが深く傷つけた、大きな木の下、少し落ち葉が積もりだした上に、数枚の赤や青の羽根が落ちているのが見えた時「何かあったのかな?」とやっと考え出した。
森が静かすぎる気がした。
今までも、ロロが大きく吠えた後には、確かに鳥たちは飛びだし、その慌てた羽音が遠くに行ってしまうと、森はとても静かにはなった。
けれども、そこには魚の跳ねる音や、木々の揺れる音、それに遠くからは鳥たちの声や羽音は聞えたはずだった。
しかし、今はどうだ。まるで声をひそめているみたいだ、とロロは思い、何気なしに空を見上げた。
すると遠く、山の方から1羽の鳥が飛んでくるのが見えた。
それはいつも率先しておしゃべりをしている赤い羽根の鳥だった。
その後ろには、空の青にまぎれてしばらく気付かなかったけど、もう1羽、青い羽根の鳥も飛んできていた。

2羽の鳥たちは湖のあたりまで来るとゆっくり、あたりをうかがう様に降りていた。
そして、ロロの座っている場所のほど近い木、それはロロが傷つけた、いつものおしゃべりの木だった、から伸びた枝にとまった。
とまった後も、赤い羽根の鳥と青い羽根の鳥は、まるで何かを押しつけ合う様に顔を見合わせ、羽をばたつかせていた。
ロロがその様子を何気なしにみていると、その視線に気づいた2羽は、すこしビクッとしたかと思うと、また顔を見合わせたが、一度軽くうなづくと赤い羽根の鳥がロロに向かって話し出した。

「ねぇ、クマさん。あなた今まで何処にいたの?」
ロロは何も言わずにただ赤い羽根の鳥を見ていた。
ただ「あぁ、こんなかよわい声をしていたんだな。」と思っただけだった。
そんなロロの様子に構う事なく、赤い羽根の鳥は、
「あなたがいなくなってから、ワタシたちは大変だったのよ!そりゃあ、もちろん、あなたが吠えないお陰で、ゆっくり木の実を食べながら、みんなと…あぁ、この子や他の子たちとね、いつも通りおしゃべりしていたんだけど、しばらくすると、あなたが居ないのをいいことに、キツネがここに顔を出すようになって、ワタシたちにイタズラする様になったのよ!羽根をひっかいたり、木の実をぶつけたりして…、もう災難だったわ!」
と矢継ぎ早に話した。
ロロは、赤い羽根の鳥の言葉のあまりの早さに、しばらく何を言っているのか分からなかった。
木の実を口に放り込んでいた手は今や完全に止まっていた。
そして、ゆっくりと、とてもゆっくりと鳥たちに向かい話しかけた。
「…ボクが、怖くないの?」
一瞬、鳥たちの動きが止まったが、直ぐに、やはり赤い羽根の鳥が話し出した。
「怖くないかって?そりゃあ怖いわよ。今でも怖くないわけじゃないわ。でもね、ワタシたちも怖いけど、キツネやオオカミだって、あなたの事が怖いのよ。あなたが吠えてた時、ワタシたちはいつも逃げてたわ。でもね、同じ様に、キツネやオオカミも、あなたが吠えている間は、ここに近寄らなかったのよ。あなたが吠えてくれなければ、ワタシたちはココでゆっくりとおしゃべりする事も、木の実や果物を食べる事も出来ないのよ。山の向こうなんてそりゃあヒドイところで…。」
あんまりにも、赤い羽根の鳥が一気に話すので、ロロは「山の向こう…」あたりから聞くのを止めた。
止めて、赤い羽根の鳥が言った事をゆっくり考えていた。
ロロは全てを分かったつもりにはなれなかったけれど、1つだけ分かった事は、自分が今まで、自分勝手に吠えてただけだったのに、それが鳥たちにとっては、この場所にとっては必要な事みたいだ、って事だった。
そう考えて、ロロは少しだけ空腹感が埋まった様な気がした。
そして、思いついた様に、鳥たちに「ねぇ。」と声をかけた。
赤い羽根の鳥はやっとしゃべるのと、その動きを止めた。その後、青い羽根の鳥をチラリとみて、目を合わせた後、ゆっくりとロロに向かい顔を向けた。
「キミたちに名前はあるの?」
と、ロロが言った時、鳥たちは動きを止めたままだったが、やはり赤い羽根の鳥が慌てて話し出した。
「も、もちろんよ。ワタシたちは仲間がたくさんいるし、見た目も、ほら、あなたから見ても似てると思うでしょ?だから、もちろん、名前はあるわ。…あ、ワタシはチル。こっちの青いのがミルって言うの。」
「チル…ミル…。ひとつお願いがあるんだけど。」
ロロが言うと、すこし羽根をばたつかせて、鳥たちは首をかしげた。ロロは続けて、こういった。
「僕を…僕の事を、ロロって呼んでくれないか?」
鳥たちは首をかしげたまま、お互いを見合った。そしてクスッと笑う様にチチチッと鳴いた後、
「いいわ。ロロ、ね。じゃあロロ、お願い。ワタシたちの為に吠えてくれない?」
ロロは何だか嬉しくなった。少しだけロロと呼ばれた事が悲しくもあったけれど、嬉しさの方がやはり強かった。
ロロは鳥たちに見えない様に下を向き、少しだけ頬を緩めた後、すっくと立ち上がった。
そして、胸いっぱいに息を吸い込んだ後、とても大きく、とても力強く、とても太い声で、全身を使って吠えた。
その声が聞えたと同時に、鳥たちは飛びだしたが、湖の上空で、笑いながら、回りながら、嬉しそうに飛んでいた。
その様子をみているロロの顔は、とても満足げだった。

第6話へ

もりのくま第4話

森の外はとても明るかった。
森の中はもちろん明るかったんだけれど、木がない事でこんなにもお日様がまんべんなく照らすという事をロロは初めて知った。
そして森の中よりもずっと暖かだった。
エリのおさげを揺らす風もとても心地よかった。

ロロとエリは、ずっと手を繋いだまま、エリの家に向かって野道を歩いた。
森の中よりもずっと森の外の方が歩きやすい事も、ロロにとっては新鮮だった。
エリはずっとニコニコしながら、繋いだ手をブンブン振って元気良く歩いていた。
そして、道端に野花を見つけると、
「これはシロツメクサと言って、花かんむりにすると、とってもカワイイの。」だとか、
「あれはクローバーと言って、4枚葉っぱがあるのを見つけると幸せになれるの。」と、時に楽しそうに、時にまるで子供に教えるみたいにロロに話しながら歩いた。

ロロは見るものすべてが不思議だった。
シロツメクサやクローバーは森には無かったし、他の小さな白い花も見た事が無かった。
もちろん自分が森を出るなんて事は考えた事もなかったし、今でもまるで実感がない。
けれど、繋いだままのエリの手がとても暖かくて、それがあれば何処へでも行ける気がした。

しばらく歩いて、不意にロロはクンクンと鼻をならしてみた。
森では嗅いだ事のない、埃っぽい、少しすすけた様な匂いがして、ちょっとだけ顔をしかめてしまった。
それに気付いたエリが「どうしたの?」と聞くので、ロロは正直に「何だか埃っぽい匂いがして…。」と言った。
エリは不思議そうに小首を傾げたが、何かに気付いた様に直ぐに前を向いて、
「あ、町が見えてきたわ。私のウチはあっちの方。町はずれの丘の上にあるの。」と言って指を指した。
ロロは埃っぽい匂いは気になったが、エリが楽しそうに指を指すので「じゃあ、『しちう』までもうすぐだね。」と笑った。
エリもクスッと笑いながら「ロロったら食いしん坊なんだから。先ずはママを紹介させてね。」と言った。
エリは気づかなかったし、ロロには分からなかったその匂いは、町から来る匂いだった。

エリの家がだんだんと近づいてきても、二人はずっと手を繋いだままだった。
さすがに少し疲れたのか、ブンブンと手を振る事は無くなったけれど、ゆったりとエリのスピードに合わせて手を振りながら歩く事はロロにとってもう無くてはならないものになっていた。
むしろ、このままエリの家に着かなくてもいい、ずっと二人で歩いていたい、とロロは思っていた。
でも、そんな願いはもちろん叶うわけも無く、丘の上のエリのウチはもう目の前まで来ていた。
さっきの『埃っぽい、すすけた』匂いはずっと強くなっていたけれど、エリはもちろん、ロロも気付かなくなっていた。

エリの家のドアがゆっくり開いて、そこから先ず顔を出し、そしてゆっくり、とてもゆっくりとにんげんが出てきた。
それはまるでエリをずっと大人にした様な、とてもキレイな人だった。
でも、その顔には、エリの様な、明るい、元気そうな様子は全く見えず、何処か不安げなまま、エリを、そしてチラリとロロを見ていた。
「あ、ママだっ。ママぁ~っ!」
と言ったかと思うと、エリはパッとロロの手を離し、そのにんげんに駆け寄っていった。
『あれがエリのママか』とロロは思ったし、『なんだ。まだあんなに元気じゃないか。』とも思った。
でも、エリに聞いて思っていた『ママ』とは何だか違うな、と思う気持ちが一番大きかった。

エリはママに向かって飛び付いた。ポフッと音がロロまで聞えてきそうなほどに。
「ママ、あのね…。「エリッ!大丈夫?怪我は無いのっ!?」
ママはエリを一度強く抱きしめたかと思うと、エリの言葉をさえぎって矢継ぎ早にそう言い、「あぁ…、エリ…。」と言って、もう一度強く抱きしめた。
ロロはその姿がとても羨ましかった。今までそんな事はもちろんされた事は無かったし、そんな事をされると思った事も無かった。
今となってはとても大きな身体になってしまったロロを、あんな風に抱きしめてくれる相手なんていないだろうし、例え小さかったとしても、そんな相手はいないだろうし、いなかったな、と考えるとロロは少し寂しくなった。

「さ、エリ。早くおうちに入ってなさい。」「でも、ロロが…。「いいから早くっ!!」
最初は優しく、次はまたエリの言葉をさえぎって、とても強くママは言った。怒鳴った、と言っても良いかも知れない。
エリはママの顔を見上げながら、呆然としていた。なぜ自分が怒られているのか分からなかった。
ママの言う事はちゃんと聞かなければいけない。でもロロにママを紹介して、シチューも食べさせたい。
そんな気持ちをどうして良いか分からず、エリは立ち尽くしていた。
少し離れた場所にいるロロを見た。さっきまで一緒にいたクマは寂しそうな、悲しそうな、無理に笑おうとしている様な顔でエリを見つめていた。

その時、エリの後ろから「お嬢ちゃん。ママの言う事を聞いて、早くウチに入るんだ。」と言う男の声が聞こえたかと思うと、ゾロゾロと数人の、細長い筒の様なものを持った男たちが家の中から出てきた。
男たちはエリとママを守るように、壁になるように並び、エリたちの前に立った男以外は、みんな筒をロロに向けて構えた。
ロロは何が起きているのか、さっぱり分からなかったから、ずっとエリの方を見ていた。
でも、一つだけ分かった事があった。
それは、町が近付くにつれて濃くなっていった『埃っぽい、すすけた』様な匂いは、その男たちからしたものだったし、もっとちゃんと言えば、その構えている筒からするものだった。
そして、その匂いは、ロロをとても不安にさせていた。

「おいっ!そこのクマっ!!」
ロロはビクッとして、急に話し出した男の方をおどおどと見た。男はキッとロロを睨んだまま、片手にもった小型の道具を上に向けていた。
「この家を、町を荒らすつもりならさっさと森へ帰れっ!今ならまだ見逃してやる!!」
男の言葉には、説明をさせる余裕はなかった。
でも、ロロには何が起きているのかサッパリ分からなかった。
男の後ろ、ママにギュッと抱かれたままのエリを見た。とても悲しそうな、怯えたような顔をしてロロを見ていた。
『エリ、そんな顔をしないでくれ。さっきみたいに笑っててくれ。』
ロロはそう思うと、知らず知らずのうちに足をゆっくりと前へと、エリの方へとすすめていた。

ダンッッ!!

と、とても大きな音がなり、驚いたロロは尻餅をついてしまっていた。
男の持っていた道具から、白く弱い煙があがっていた。
そして『埃っぽい、すすけた』匂いは、さっきよりずっと濃くなっていた。

「次はないぞ。さぁ帰るんだ。」
語尾を荒げずに話す、その男の言葉は無感情のままでロロに向けられていた。
ロロは男の顔を見た。オオカミよりもずっと冷たい目をしていた。
周りの男たちも同じ様な目をして、筒の先をロロに向けていた。
ロロはとても怖くなった。
エリを見た。さっきよりもずっと怯えた、悲しそうな目でロロを見ていた。
ロロはとても悲しくなった。
頭の中は混乱していたが、もうここには、エリとは一緒にいられない、と言う事だけはハッキリと分かった。
そう思った時、ロロはおなかが空いた時に感じる空腹感を、その少し上あたり、胸の中に感じて苦しくなった。

ロロは少し後ずさりしながら、男とエリの顔を交互に何度か見た後、後ろを振り返り、そのまま手足を使って必死に走りだした。
「ぐぉーーーーーんっ!!」と叫びながら走った。
ロロは泣いていた。叫びながら泣いていた。どうしようも無く悲しかった。
その悲しさを埋める様に、とても強く、続く限り叫んだ。
後ろでは、男がもう一度、空に向かって銃を撃ったが、その音はもうロロには聞えていなかったし、
ママに抱きしめられたまま、身動きも取れないまま、必死に手を伸ばし、
「ロロぉーーーーっ!!」と叫んだエリの声も、もうロロには聞えていなかった。

第5話へ

もりのくま第3話

それから、エリは毎日の様に、ロロに会いに森にやってきた。
学校が終わった後や、お使いの帰りなど、時間を見つけては森にやってきた。
ロロとしては、狼やキツネが心配だったけど、エリは「大丈夫。人間にはそう簡単に近寄ってこないのよ。」と、大人ぶった言い方で言って聞かなかった。
それにロロとしても、やっぱりエリに会いたかった。

二人は木の実や果物を食べながら色んなお話をした。
ときどき、エリがもってきた給食の残りや、クッキーも食べたりした。
エリがもってくる食べ物は、美味しいのだけど、ロロは「やっぱり森のたべものの方が美味しいなぁ」と思ったりした。
けれど、それはエリには黙っていた。
エリは町の事や学校の事(学校が何なのかロロにはよく分からなかったが、エリくらいの大きさのにんげんが集まる所と勝手に理解した)や、家族の事を、時にはプンプン怒りながら、ほとんどは楽しそうに話した。
とりわけママの話をする時はとても楽しそうに話した。
ロロには『ママ』と言うものもよく分からなかったけど、とても優しい大きいにんげん、である事は分った。少なくともエリにとってはそんなにんげんなのだろう、と思っていた。
ロロはもちろん、森の生活の事を話した。
どの木の実が美味しいだとか、あの果物は夏はとても酸っぱいけれど、秋になるととても甘いとか、銀杏の木の下で寝るのはとても暖かいし気に入ってるんだけれど、秋になると実が落ちてきて、それ自体は美味しいのだけれど、寝る時にはとてもくさくて眠れない時がある事。
ふたりの話はまったく留まる事を知らなかった。
でも、夕暮れ前、エリを森の入口まで送った後の帰り道、ロロはいつもとても寂しかった。
そんな時は、湖まで帰ると、ロロはとても大きな声で吠えてみた。
森から帰るエリに聞こえる様に、とても大きな声で吠えていた。

そんな日が何日も続いたある日の事だった。

「ねぇ。ロロにママのシチューを食べさせてみたいわ。すっごい美味しいんだからっ!」
いつもの通り、もしかしたらいつも以上に嬉しそうにエリは言った。
「し、ちう?」ロロはまったくピンと来なかったが、エリの様子を見ていると、きっととても美味しいんだろう、と思えた。
「そうよ。私のママはお料理がとても美味しいんだけど、中でもシチューはすっごい美味しいの!
 きっとロロもびっくりすると思うわ!」
エリがあんまりにも嬉しそうに話すから、ロロも何だかとても嬉しくなってきて、
「うん。エリのママの『しちう』、食べてみたい。」
と、思わず言ってしまった。もちろん本心だったのだけれど、何より嬉しそうなエリをもっと嬉しそうにさせたかった。
それを聞いたエリは、目を輝かせながら、一段と明るくなった顔をロロに向けて、
「そうだ!今から私のおうちに行きましょう!
 昨日がシチューだったから、きっと今日もたくさん残ってるハズだわっ!
 ねぇ、そうしましょっ!」
と言って立ち上がり、ロロの手を掴んでグイッと力いっぱい引っ張った。
エリの力では、当然ロロを強引に立ち上がらせる事は出来なかったが、エリの嬉しそうな顔をずっとみたくて、その手に引きずられるように立ち上がり、二人は歩きだした。

「でも…町は怖くない?」
ロロはずっと森で住んでいたし、森を出た事はなかった。
にんげんを見たのもエリを含めて数人だし、湖の方まで「にんげんが来たぞーっ!」と言って逃げてくるリスやウサギも見ていた(そして、湖にいるロロを見つけて、また逃げ出していく姿も見ていた)。
エリを知るまでは、にんげんとは怖いものだ、とずっと思ってたし、今も何処かでそう思っていた。
そんな不安な顔をしたまま、ロロの手を引きつつ先を歩くエリが振り返った時に、聞いてみた。
エリは少し立ち止まって、やっぱり不思議そうにロロの顔を眺めた後、にっこりして、
「大丈夫よ。ママはもちろん、町の人は優しいし…たまにいたずらする子もいるけど、そんなのロロがガオーッて吠えればすぐ逃げちゃうんだから。」と言った。
「そうか、キツネみたいなにんげんもいるんだね。
 わかったよ。そしたらエリが合図をしてくれれば、ガオーッて吠えてあげるよ。」
そう言うと、周りの木でおしゃべりしていた鳥たちが、その声に驚いて一斉にバタバタと飛び立っていった。
その様子をみて、すこしだけキョトンとして見つめあった後、エリとロロは笑いあった。

そして、また歩き出し、ロロは初めて森を出る事になった。
でも、繋いだままのエリの手が、何だかとても力強くて、優しくて、さっきまであった不安はもうなくなっていた。

第4話へ

もりのくま第2話

その日、クマは一人目覚めた時、前の日に果物をたくさん食べすぎたせいで、いつもより遅い時間に起きて、湖に顔を洗いに行こうとした。
眠気まなこをもじゃもじゃの腕でこすりながら湖の方へ歩いていくと、何かがいつもと違った。
そこには一人の少女がたっていた。
『あれは…にんげんじゃないか?』
クマは人を見るのは初めてじゃなかった。
まだずっと小さい頃、森の入り口近くまで行った時に数人のにんげんが笑いながら木の実を摘んでいたところを見たことがあった。
でも、そのにんげんと比べると、今、湖のほとりに立っているにんげんは何てちいさいんだろう、とクマは思った。
その少女は、クマの半分より少し大きいくらいの背丈で、長くのばしたサラサラの茶色い髪を二つにまとめたおさげにしていて、赤いワンピースみたいな服を着ていた。
肌もとても真白で、まるで冬の国から来たみたいだった。
クマは何だか分からなくなってしまった。
いつもの朝(既に昼過ぎではあったが)のハズなのに全く違う。何か落ち着かない。
しかし、少女のキョロキョロしたり、湖の水を手ですくったりする仕草をみていると、まるでそれが当たり前の様に見えてきた。
少女の大きな黒い目を見ていると、妙にそわそわして、知らず知らずの内に少しづつ、クマは少女に近づいていた。
クマが手を伸ばせば、その爪先が届くか届かないかの距離までフラフラと近づいた時、やっと少女は近づいてきた何かに気がついた。
ハッとした表情、それは驚きでもあり、困惑でもあったが、その黒い、大きな目にはほんの少しの好奇心も含まれていた。
クマが立ち止まった時、少女は微動だにせず、キョトンとした顔でクマを見上げていた。
幼さの残るその顔はとても可愛らしかった。

「…道に迷ったのかい?」
クマは話しかけていた。怖がらせない様に、精一杯声の調子を落として。
それでもクマの声は少女からすれば、大きく、力強く、太かった。
少女は、ほんのちょっぴりの間、クマが何を言ってるか分からなかった様に間があったが、大きく目を見開いたまま、小刻みに頭を縦に何度も振った。

「この辺まではにんげんは入って来ないんだけどなぁ…。
 でも、この森には、いたずらしてくるキツネや、とっても怖い狼とか居るから危ないよ。
 ボクが出口近くまで送っていくから、早く帰った方が良いよ。」
クマがそういうと少女は、またほんのちょっぴり、何を言っているか分からなかった様な間があった後、「プッ」と噴き出したかと思うと、肩を震わせてとても元気に笑いだした。
その声はすごく楽しげで、まるで魚が水面を跳ねるみたいに軽やかだった。でも、クマは何で少女が笑っているのか全く分からなかった。
それどころか『せっかく送ってあげるって言ってるのに、何で笑うんだよ。にんげんってのは変わってるなぁ。』と思ったり、『ふだん全く話してないから、ボクは上手く喋れてないのかなぁ?』と思ったりしてグルグル悩んでいた。
しばらくして、はーはー息苦しそうに、口元を覆っていた両手を少し外して、少女はクマにこういった。

「あなたの方がずっと怖い顔しているわよっ。」
そう言うと、少女はまたすごく楽しげに、とても元気に笑いだした。
クマはやっと少女の笑った意味を理解できて、自分がちゃんと喋れていた事に安心したせいもあるけど、少し照れながら、少し困った顔をしながら、頭を掻いた。
でも、何だか悪くない気持ちだった。
それはきっとウキウキする、って気持ちだったのかも知れない。
少女はさっきよりは短い時間で笑い終え、湖の水をひとすくい飲んで、落ち着かせてから、
「じゃあ、道案内をお願いできるかしら?」と言った。
「もちろん!」クマは出来る限り元気よく、右手で胸をドンッと叩きながら言った。
その声があんまりにも大きかった為に、小鳥たちは一斉に飛び出したし、それを見てまた少女は嬉しそうに笑った。

「私の名前はエリ。エリって言うの。よろしくね。」と少女はそう言って、右手を差し出した。
クマはどうして良いか分らなかった。
生まれてこの方、自己紹介などしたことないし、誰かと握手をしたことももちろん無かったから、少女の右手がどういう意味なのか分らなかった。
いつまでもオロオロしているクマの様子を見て、少女は両手を後ろにまわして、少し腰をかがめ、不思議そうにクマを覗き込みながら、「あなた、名前は何ていうの?」と言った。
また、クマはどうして良いか分らなかった。
名前などないし、かといって「クマだよ。」と言うのも変だと思った。
しばらく悩んだあげく、とても小さい声で「ボクには名前がないんだ。この森でクマはボクだけだからね。」と言い訳のように言った。
少女はハッとしたような顔をした後、腕を組み、片手を顎に当てたりしながら、首を右に左に曲げながら少し難しい顔をした。
クマはそれを見て、名前が無い恥ずかしい事に思えた。
そしてだんだん肩と頭が落ちてくるのを感じだした。

「じゃあ。」少女が急に大きな声(と言ってもクマに比べれば、小鳥のさえずり程度だけど)を出したので、クマは驚いてパッと顔をあげ、少女の方を見た。
少女はとても得意げな顔でクマを見上げていた。
「じゃあ、私があなたに名前を付けてあげるっ!……うーん、そーねぇ。」と言うとまた腕を組み、片手を顎に当てたりしながら、首を右に左に曲げだした。
そして、しばらくしてすると、ハッと勢いよく顔をあげた。

「ロロ!ロロが良いわっ!」

少女は両手をパンッとあわせて、とてもうれしそうにロロと言った。
その顔はまるで魔法を使って一瞬で花が咲いた様に輝いていた。
少なくともクマにはそう見えた。
「…ろ、ろ…」と、クマは口に出してみた。確かに悪くない、いや、とても自分にあってる気がした。
もう一度、今度はしっかりと、「ろろ。」と口にしてみると、自分が昔からロロと言う名前だったみたいな気がしてきた。
「そうよ。あなたの名前はロロ。」少女は元気よくそう言った。そしてニコニコしながら、続けていった。
「あらためて。私の名前はエリ。よろしくね、ロロッ!」ともう一度、右手を差し出した。
クマはまたしばらく動けなかった。どうしていいか分らなかったのではなく、初めて名前を呼ばれた事に動揺しつつも、心が揺れ動いていたからだった。
ふーっと息をゆっくり吐いてから、クマはゆっくりと右手をのばして、とても、とても優しく、そーっと傷つけないように少女の右手を握った。そしてこう言った。

「ボクの名前はロロ。よろしくね、エリ!!」
少女の顔がパッと明るくなって、繋がった右手同士が上下にブンブン動いた。
少女がせいいっぱい強くクマの手を握りながら振っていた。
とても嬉しそうに、あんなに大きかった目を、すごく細めながら笑っていた。

そうして、クマと少女…『ロロ』と『エリ』は友達になった。

第3話へ

もりのくま第1話

ある時代の、ある場所の話。
それは現代かも知れないし、近代かも知れないし、未来かも知れない。
町や自然の景色からみると、おそらく中世くらいの時代だと思う。

小さな町からずっと離れた山の麓に森があった。
その森はとても深くて、町の人たちも果物や木の実や山菜を採りに行っていたけど、絶対に一番奥には行かなかった。
その森は決して暗いって訳でもなく、むしろ明るいくらい。
どこまでも行けそうなくらいに明るかったんだけど、森の奥から聴こえてくる大きな声を恐れて、森の入り口から少しの場所にしか入らなかった。
その声はとても大きくて、とても力強く、また太かったから、町の人たちは「きっととんでもない化け物が住んでるんだ。捕まったら帰ってこれないぞ」なんて事を、子供たちが眠る前にほとんどの家で聞かせているくらいだったし、大人たちは子供の頃からずっと聞かされてきたから、誰も森の奥に入ろうとする人たちはいなかった。

それに森の入り口と言っても、充分に果物や木の実や山菜は取れたし、町の人たちはあえて奥まで行こうとはしなかった。

その森の奥、一番深い場所には、小さな湖があった。大きな池、と言っても良いかも知れない。
とてもキレイな湖で、どこからともなく水が湧いて、どこへともなく流れていく。
でも年中けっして枯れる事はなく、太陽が差し込むその場所は、たくさんの果物や木の実が実っていたし、魚もいつも群れで泳いでいたから、赤や青の羽根をもった鳥たちは、いつもその場所でおしゃべりしていた。
とはいえ、鳥たちにとって全く平和な場所か、と言われればそうじゃなかったかも知れない。
日に何度か聴こえてくる大きな、力強い、太い声を聞くと、鳥たちは我先にと慌てて飛び立っていって、落ち着いたかな、と思う頃にまた、湖のほとりの木々に戻ってきた。

その声の主は、湖の近く、銀杏の木の下にほった穴の中で暮らしていたクマだった。
クマはとても大きな体で、全身がくせのひどい毛むくじゃらで、目の上には傷があってとても怖い顔をしていた。
そのクマが日に何度か、多ければ10回も、とても大きな声で吠えるのだ。
それがあんまりにも大きくて、力強くて、太いから、鳥たちが逃げ出すどころか、森に棲むいたずらキツネや、獰猛なオオカミや、それに追いかけまわされるリスさえも、誰も湖の周りには近づかなかった。
いつもクマは、銀杏の木の下の穴から出てきて、何度か吠えて、また穴に帰っていった。
それがこの森の春から秋にかけての毎日だった。

クマは毎朝、起きると軽く伸びをしてから、顔を洗いに湖に行った。
顔を洗う前に、そこにうつる自分の顔を見て、それも毎日ウンザリした。
「何でボクはこんな怖い顔してるのかなぁ?…この傷もヒドイよねぇ。」
と、昔、つまづいた時に飛び出していた木の枝で引っ掛けた目の上の傷を撫でながら独りごちた。
そして顔を洗ったあと、とても不器用に、湖の中に向って手をバシャバシャ振り下ろし、偶然にも運のなかった魚を1~2匹、運が良ければ(魚にとっては運が悪ければ)5匹くらいを捕まえて食べた。
そして木の実や果物を少し食べて、座り込んだ。時には木の実や果物だけしか食べない事もあった。
クマはその見た目とは裏腹に、森の動物に手をかけた事は無かった。
湖の周りに生えている木の実や果物や山菜、それと日に1~2匹の魚があれば充分だった。
そして、たまに吠える。
クマは、その気弱さと凶悪な見た目のせいでずっと一人ぼっちだった。
話相手なんて今までいた事もない。
クマにとって吠える事は、自分が生きている事を確認する事だった。
クマが吠えると、鳥たちは一斉に逃げ出す。時には近くまで来ていたキツネやオオカミも逃げ出す。
その姿を見て、自分の声に反応する他の動物の姿を見て、自分の声が他の誰かに届いている事を実感していた。
もちろんクマには名前なんて無かった。
森の中には他にクマはいなかったし、名前を呼んでくれる動物もいなかった。
でも、クマにはそれが普通だったし、こうやって生きていくもんだ、と思っていた。
今日もまた、日が暮れだすと、銀杏の木の穴に戻って、丸くなり一人眠った。

第2話へ

12月23日(祝・金)のライヴ

おそらく今年最後のライヴになろうかと思います。
クリスマスイヴイヴの23日に
じゅんこさん、テッペーくんと言うとてもステキな2人と一緒にやれるのは、僕的にも嬉しいです。
クリスマス前の、聖なる夜の前々夜祭とも言えるライヴになるのかも知れません。
お時間作って、観に来てやって下さい。
すこししっとりめの曲をやろうかな、とも思います。
(そんな曲なんてあったかなぁ?)
良い夜を、共に過ごしましょう。

12月23日(祝・金)GURU×GURUアコースティックライヴ@池下GURU×GURU

じゅんこ
テッペー
中野こーじ

オープン19:30 スタート20:00
ライブチャージ 1500円
別途、入場時1ドリンクオーダー必要

ビー玉(詩)

色んな人が 裸足で 土足で
踏み固まった頭の中
いつしか僕は一つしか
答えを持たなくなっていた
確かガラスのビー玉を
何処かに埋めたはずだった

色んな物が 車で 言葉で
踏み固まった頭の中
いつしか僕が一人だけ
誰とも無しに話してた
確か天使や狼が
いつでも住んでたはずだった

踏み固まった土ならば
もう一度柔らかくしてみよう
何処かに隠したビー玉を
探し始めてみてもいい

ゆっくりゆっくり思い出す
自分で手探り 掘り起こす
瞳を閉じて 思い出す
一つ一つを 掘り起こす

何処かに隠したビー玉が
見つからなくても構わない
気付けば掘り起こした土は
種を蒔くのにうってつけ

そしたら水も蒔いてみよう
そしたら声を掛けてみよう
いつか種から芽が生まれ
ビー玉みたいな花が咲く

月のドライヴ

「ねぇ…吸うなら窓 開けてくれない?」

そう言われて自分がタバコをくわえている事に気がついた。
大して吸いたくもなかったけれど、そう言われたら吸わなければいけない気がして、俺はパワーウィンドウのスイッチを少しだけ押して2センチ程 窓を開け、コンビニで買った100円ライターを胸ポケットから取り出した。
…くそっ、最近のライターはなんでこんなに固いんだ…。
と、思いつつも口には出さず、何とか火を付けて、胸いっぱいに吸い込んだ煙を、顔を横に向けて外に吹き出した。

もうどれ位走らせているんだろう?雨・夜・(正確にはエンジン音とかはあるが、音声が無いと言う意味での)無音は、時間感覚を鈍らせる。もしかしたら10分かも知れないし、2時間以上経っているのかも知れない。
それどころか、俺はここが何処だかも分かっていない。

そう、気がついたらここに居たのだ。
そして、それ以前の記憶もない。
そう言う意味では、どれ位走らせているんだろう、と言う言葉も意味を持たない。
なぜなら、窓を開けろ、と言われた時からしか俺は目覚めてないからだ。

しかし俺はタバコをくわえていた。そして胸ポケットからライターを出した。
『コンビニで買った、最近の固いライター』を、だ。

俺はそれをコンビニで買った事を知っている。そして、固いライターがある事を知っている。
ただ、何処で知ったかは分からない。ただ『知っている』だけだ。
なのに、まるで不安が無い。不安すら忘れているのかも知れない。
とりあえず、隣のヤツとは会話は出来そうだ、と言う安心感のせいかも知れない。
何せ、言葉は通じるのだから。

タバコの火がフィルター近くまできていたから、名残惜しかったものの、灰皿を引き出し、タバコをもみ消した。
灰皿の中には、俺の吸ったタバコと同じ色のフィルターの吸いがらにまみれて、数本の違う吸いがらがあった。
『コイツもタバコを吸うのか?』
親近感がわくと共に、急に人間らしく感じたせいで、俺はやっと不安感を抱いた。

俺は何処かに連れて行かれているのか?

見ず知らずの人間を隣に乗せて運転する事をドライヴとは言わない。むしろ移送か輸送だ。
もちろん俺が知らないだけかも知れない。が、今の俺はそれほど楽観視出来ない。
むしろ『俺を何処かに連れていく』事が、今の目的としか思えない。その割にタバコは自由に吸える様だから、拉致までヒドイ状況では無い様だ。

…ヒドイ状況?一体、俺にとって何がヒドイ状況なんだ?そもそも記憶が無い事こそ、最大にヒドイ状況じゃないのか?それとも記憶が無い事こそが俺の防衛本能だって言うのか?

「ねぇ、寒いんだけど?」

…俺は、そう言われても何の事だか分からなかった。が、頬に当たる風のせいで、2センチ程 開いた窓は開けっ放しだった事に気付いた。俺はそそくさとパワーウィンドウのスイッチを引き上げ、風を止めた。
確かに車内は少し湿気を含んだ風で冷え始めていた。

そして、俺は神経質な態度に少しイラつきながら、助手席に座りなおして、こう思った。

『俺はまだ、一言も話してない』と。

理屈vs感覚

寒くなって来たけど、風邪とかひいてませんか?
僕はとっくにひいたので、今では大丈夫です。
咳は出ますが、持病みたいなもんですね。キライじゃない。

そんな僕は最近またたくさん本を読んでます。
漫画もふくめて、ね。

今は、吉本ばなな著『キッチン』なんてのも読んでます。
とりあえず、目に付いたものは読んでいこう、と。

そして今日読み終わったのが
養老孟司・宮崎駿著『虫眼とアニ眼』

まー対談なんだけれども、なんと言うか。
最初はおそらく『養老さんに宮崎さんのアニメを語ってもらおう』
なんて企画だったのかな、とも思う。
もしかしたら『二人が思う共通項』なんてのも考えてたのかな?

で、結局、僕が思うに、この本は
『現代社会で子供たちに憂う事』
について語っている本な気がする。

『子供に対して心配』と言うよりは
『大人が子供に対する態度に影響される子供が心配』と言う感じ。

そして、僕は対談よりも何よりも
養老孟司先生の『宮崎駿論』から広がる現代の憂い…って言葉が正しいか分かんないけど、
養老先生が書かれた部分がとてもよかった。

それを読む為に、この本を買っていいよ、って他の人に勧められるくらい良かった。

そして、もっと自由になろうって思った。
ならなきゃ、じゃなくて、なろう、ね。
それすら縛らない自由さで。

僕は考え方がとても理系的で(実際は文系的だけど、その話はまた別の機会に)
養老先生の言葉を借りれば『理屈』で考える事が多い。
曲作りで言えば『この歌詞が来たら、次はこれだろ?』みたいなのもある。
でも一方で、ふわっ、と歌詞がメロが出る時もある。
んで、結局、ふわっ、と作った方が自分としてグッとくる。
(なんだか擬音が多くて全然理系じゃないね)

まー今までも『どう?この曲良いでしょ?』みたいなのも無くもない。
けど、暫くすると、やらなくなったりする。

そして、例えば本、例えば曲、例えば絵。
それに関しても『俺は何でこれが良いんだろう?』と考える様になってた。

それも養老先生はこう言っている。

『良いものは良い』

全く持って『理屈』じゃないね。
それってステキだと思ったし、それを忘れつつあったな、って思ったよ。

かと言ってすぐに、そうなれるか分からないけどね。
少しづつ、そーなれたら、自然になれたら良いなって思うよ。


だけど、これって、もし、好きな人とか出来た時に…

「君の事が好きなんだ」
「私のどこが好きなの?」
「…何となく。」

って答える事とは違うよね?これ、嫌われちゃうよね?
そんな時には理屈は必要かもね?

言葉は足りない時もあるけど、言葉はやっぱり必要なのでした。

是非、読んでみてね。
もし声かけてくれれば貸す事も辞さないです。

PROFILE

こーじ

Author:こーじ
愛知県に住んでいる
ギター&ボーカルな人です。

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